「不登校と脳機能の疲労状態」

いじめは被害者にとって「自分の存在そのものが否定される」情報です。いじめられた被害者は寂しくて、辛くて、不安で、 生きている価値がないのではないかと苦しみます。 この不安・緊張の持続が生命維持装置である大脳辺縁系を疲れさせ、 自律神経機能が損なわれ、体温調節やホルモン分泌に障害を起こしてしまうため質の良い眠りが取れなくなり、 結果として慢性的な時差ボケ状態を作ります。この時差ボケ状態が固定してしまうと、大脳皮質(高次脳機能)が長い間しっかりと働けなくなり、 こころの問題や勉強が頭に入らないという悪循環になります。

問題は一度この状態に陥ると健全な社会生活を取り戻すまでに数ヶ月から十数年を要することです。 この背景には、自分で納得できる原因が分からないまま、 学校に通うことができなくなった状態そのものがご本人にとっては強い自己否定的衝撃として感じられていて、 ある種の心的外傷となっていることが上げられます。 不登校状態の長期化は30%におよびその半分の(15%)が「社会的引きこもり」に至ります。 不登校状態には軽いものから重症なものまで様々な段階があるのです。

いじめのような持続する不安・緊張をもたらす全ての状況が慢性疲労症候群としての不登校を作ります。 例えば愛する家族の健康問題(両親の癌や脳卒中など)や、両親の不仲、友人や教師との関係悪化、睡眠時間を削った受験勉強での頑張り、 部活のキャプテンや代表選手になって責任が大きくなる、命の危険を感じるような地震や交通事故に遭遇する、 発熱を伴うウイルス性病気に掛かってしまう、 などなど様々なものが含まれます。

最近、不登校状態は成人における慢性疲労症候群と同様の病態を持つことが明らかになってきました。

不登校と脳機能の疲労状態

不登校の子どもの中には確かに「怠けている」としか 言いようのない子どもがいます。 しかし、だからといって「不登校は怠けだ」と言い切ることは正しくありません。 つまり不登校という現象は同じでも、登校しない・登校できない子ども達の問題は多様なのです。 「不登校」という呼び方はわが国では1980年代後半から一般的になりました。 それ以降は「登校拒否」という呼び方が一般的でした。 「登校拒否」という呼び方の前は、「学校恐怖症」という呼び方がありました。 さらに不登校研究の歴史を溯ると、「子どもが学校に行けない・行かない」問題に注目した 初めての研究は、1932年に発表されて米国のブロードウィンの研究に行き着きます。 彼はこの問題を「怠け」に準ずるタイプと見なしたのです。 その後、1941年に、やはり米国のジョンソンが、「学校恐怖症」の研究を公表します。 彼は怠けとは異なるタイプの不登校の子どもがいることを有名にしたのです。 一般に不登校・登校拒否研究はこのジョンソンが起源であるといわれています。

ひきこもりを克服

不登校と脳機能の疲労状態